肝臓病には、↓このようにたくさん病名あって、ややこしいです。
- ・肝硬変
- ・脂肪肝
- ・肝炎
- ・ウイルス性肝炎
- ・アルコール性脂肪肝
- ・肝不全
- ・急性肝炎
など。
「それぞれの肝臓病の違いが分からない」
「一体自分がどの肝臓病なのか分からない」
「どんな病気なのか知らない」
という人がほとんどです。
■このページでは、肝臓病の種類を誰でも分かるように解説します。
- ・それぞれの重症度
- ・それぞれの症状
- ・それぞれの原因
- ・それぞれの治し方
も分かるようになっています。
専門用語は一切使わずに基礎から解説します。
これを見れば、肝臓の病気の種類がすべて理解できるようになっているので参考にしてください。
※ 「そもそも肝臓についてよく知らない」という方は、目次の「肝臓の基礎知識」から読むと理解しやすいです。肝臓の病気を理解するために必要な知識を簡単にまとめています。
目次
肝臓の病気について
ひとくちに肝臓の病気といってもいくつか種類があります。
代表的な肝臓病は、
- 脂肪肝
- 肝炎
- 肝硬変
- 肝がん
の4つです。
一般的には、この4つをまとめて『肝臓病』(または肝疾患、肝機能障害など)と呼んでいます。
この4つは全く違う病気ではなく、どんどん進行して重症化していく過程で病名も変化していきます。
脂肪肝は、比較的軽い生活習慣病です。
健康診断で男性の30%、女性の10%が脂肪肝と診断されます。
脂肪肝になってもお酒や食生活を改善しないと、肝炎 → 肝硬変 → 肝がん に進行していきます。
つまり、脂肪肝は比較的軽く、肝がんが一番重症と言えます。
さらに細かく言うと、肝硬変の一歩手前の状態、つまり肝炎と肝硬変の間で「肝線維症」という病名を使うこともあります。
また、肝硬変の末期の状態を「肝不全」と言います。
このページの後ろでそれぞれの原因・症状・治療法を紹介しています。
肝臓病の名前
肝臓病は大きく分けて、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝がんの4つと理解できましたね。
でも、肝臓病には、「ウイルス性肝炎」、「アルコール性脂肪肝」など、さらに詳しい病名があります。
これらは病名が長くてややこしく感じますが、「病気の原因」と「病気の状態」を組み合わせて病名になっているだけです。
例えば…、
・アルコールが原因の脂肪肝は、『アルコール性脂肪肝』
・ウイルスが原因の肝炎は『ウイルス性肝炎』
と、呼びます。
ちなみに、日本人に一番多い肝臓病は、『ウイルス性肝炎』です。
肝臓病の原因は他にも以下のものがあります。
- ・自己免疫…本来体を守るために働く免疫反応が自分自身の体を攻撃してしまう
- ・過栄養…食べ過ぎによる肥満
- ・薬剤性…薬の副作用
- ・非アルコール性…アルコールをほとんど飲まないのに脂肪肝などになる場合。決定的な原因は分かっていない。
原因別にひとくくりで呼ぶこともある
「アルコールが原因の肝臓病」をひとくくりで、「アルコール性肝障害」と呼ぶことも多いです。
この場合、アルコール性肝障害には、これらの病気が含まれます。
- ・アルコール性脂肪肝
- ・アルコール性肝炎
- ・アルコール性肝硬変
- ・アルコール性線維症
医師から「アルコール性肝障害」といわれたら、自分は脂肪肝、肝炎、肝硬変のどの段階に今いるのかを確認する必要があります。
これと同じように、「薬剤が原因の肝臓病」をひとくくりで「薬剤性肝障害」と呼ぶこともあります。
肝臓の病気の種類
ここからは、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝がんを1つずつ説明していきます。
【1】 脂肪肝
脂肪肝は、お酒の飲みすぎや肥満・食べすぎ・糖尿病が原因で、名前の通り肝細胞に脂肪が過剰にたまった状態です。
脂肪がたまって肝臓に負担がかかるので肝機能が低下します。でも、ほとんど症状はありません。
脂肪肝の治療の基本は、禁酒、食事療法、運動、など普段の生活で自分でできることです。
健康診断や人間ドッグで男性の30%、女性の10%程度に脂肪肝が認められています。
脂肪肝の種類
脂肪肝は「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」に大別されます。
「アルコール性脂肪肝」は飲酒が原因の脂肪肝です。
一方で、お酒を飲まない(アルコール摂取量が1日20g以下)のに、アルコール性脂肪肝と同じような障害がある場合を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼びます。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうち、脂肪がたまっただけで炎症などを起こさない場合は「単純性脂肪肝」、肝臓に炎症が起きて肝炎に進行してしまった場合は「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と言います。
その他にも、マイナーな脂肪肝の種類として以下のものがあります。これは飲酒や肥満は関係ありません。
- ・急性妊娠性脂肪肝
- ・薬物性肝炎による脂肪肝
- ・ライ症候群
脂肪肝の進行
アルコール性脂肪肝の人がさらに大量の飲酒を続けていると、炎症が起きて「アルコール性肝炎」に移行します。さらに飲酒を続けると炎症を繰り返しで肝細胞の線維化が進み(アルコール性肝線維症)、肝硬変に移行し、最終的には肝がんに移行する場合もあります。
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」の一部は、炎症を起こして肝炎に進行してしまい、「非アルコール脂肪性肝炎(NASH)」となります。さらに炎症が持続し肝細胞の線維化が進み(非アルコール性肝線維症)、やがて肝硬変へ進行し、肝がんも発生させることがあります。NASHでは、10年後には1~2割の人が肝硬変に移行し、さらにそのうちの11%の人が5年後に肝がんに移行すると言われています。
NAFLDでも炎症を起こさないものは「単純性脂肪肝」と言い、比較的予後が良いです。(単純性脂肪肝からNASHに進行することもあります。)
【2】 肝炎
免疫反応(体が有害なものを取り除こうとすること)によって、肝細胞で炎症が起き、肝細胞が壊れていくのが肝炎です。
肝臓を構成している肝細胞が壊れてしまうので、壊れた程度によって肝臓の働きが低下します。
その原因の80%がウイルス感染で、そのほかはアルコールや薬剤です。
原因によらず肝炎の初期は、風邪に似た症状がでることがありますが、大半が数週間で自然治癒します。
ただ、半年以上肝炎が続くと炎症の繰り返しによって肝細胞が線維化(硬くなる)して肝硬変→肝がんへ移行してしまうこともあります。
また、ごくまれですが、半年経っていなくても急激に重症化することがあります。その場合診断後1ヶ月以内の死亡率が5割に達し、治療はきわめて困難です。
肝炎の種類
肝炎は、肝炎の進行度で呼び方が変わります。
まず、6ヶ月以上肝炎が続くかを大きなポイントとして、「急性肝炎」と「慢性肝炎」に大別されます。
6ヶ月以内に症状が治まる一過性の肝炎を「急性肝炎」、6ヶ月以上持続的に肝炎が続いていると「慢性肝炎」と呼びます。
また、肝炎患者の1%以下とごくまれですが、急性肝炎のうち、より激しいものを「劇症肝炎」と言います。これは急激に広範囲な肝臓壊死が起きて診断後1ヶ月以内の死亡率が5割に達します。
また、原因で分類して呼ぶこともあります。例えば、ウイルスが原因の肝炎はウイルス性肝炎、アルコールが原因の肝炎はアルコール性肝炎と呼びます。
肝炎患者の80%がウイルス性肝炎ですが、ウイルスにもA型、B型、C型、D型、E型があるのでさらに細かく、「C型ウイルス肝炎」(または略してC型肝炎)などと呼ぶことも多いです。マイナーなウイルスとしてEBウイルス、サイトメガロウイルスなどもあります。
このように肝炎は、進行度別の呼び方と原因別の呼び方があります。組み合わせて、「C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎」といったように使います。
肝炎の進行
大きな流れとして、最初は急性肝炎になり、それが治りきらず6ヶ月以上続くと慢性肝炎に移行し、さらに肝硬変に進み、最終的に肝がんになるというルートがあります。
ルートの出発点となる急性肝炎のほとんどはウイルスが原因です。
ウイルスの中でも、日本人の肝炎はA型、B型、C型が大半を占めていて、E型、D型はまれです。
また、C型ウイルスによる急性肝炎の患者の70%が、B型ウイルスによる急性肝炎の患者の10%が、急性肝炎で治りきらずに慢性肝炎に進行してしまいます。
逆にA型ウイルスによる肝炎は、急性肝炎から慢性肝炎に移行することはありません。
また、急性肝炎を経ないで、最初から慢性肝炎の形で発病することもあります。なので、健康診断で慢性肝炎が見つかり、驚く人も多いです。
急性肝炎は、発熱やだるさなどの風邪に似た症状、または食欲不振や吐き気などの胃腸炎のような症状などで始まり、その後黄疸が起こります。そしてほとんどの場合、数週間~2ヶ月で治ります。
一方、慢性肝炎はこのような急性肝炎の症状が続く場合ですが、先ほど説明したようにはっきりした急性肝炎がなく、いつとはなしに発病することもあります。その場合、症状は全くないかあってもごく軽いものです。
【3】 肝硬変
慢性肝炎で肝細胞の破壊と再生を繰り返していると、肝細胞が壊死して欠落した部分を硬い組織が埋めていきます。(これを線維化と言います)
これが進行して、肝臓の組織のほとんどが線維化した硬い組織に置き換わってしまった状態が「肝硬変」です。
その結果、肝臓は硬く、小さくなり、肝機能も低下します。
慢性肝炎を治療せず放置すると肝硬変に移行するので、肝硬変は慢性肝炎の終末像だと言われます。
つまり、肝硬変の原因は慢性肝炎の原因と同じなので、前項で説明したようにほとんどがC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスで、その他にアルコールなどが原因になります。
肝硬変を起こした肝臓は元には戻りません。進行を食い止めることが大事です。
肝硬変の種類
肝硬変は進行度によって、初期の状態を「代償期(または代償性肝硬変)」、さらに進んだ状態を「非代償期(または非代償性肝硬変)」と呼びます。
肝臓は再生能力が高く、余力を持って機能しているので、肝硬変の初期では症状がほとんどありません。この状態を「代償期」または「代償性肝硬変」と言います。
これに対し、肝硬変が進むと肝臓の余力をもってしても正常な働きを維持できず、黄疸や腹水、肝性脳症、食道静脈瘤などさまざまな症状が出ます。この状態を「非代償期」または「非代償性肝硬変」と言います。
※原発性胆汁性肝硬変については後ろの「その他の肝臓病」で説明しています。
肝硬変の進行
代償性肝硬変は、慢性肝炎から肝硬変になってすぐの時期です。ただ、慢性肝炎から急に移行するわけではなく、何年もかけて徐々に移行するので、慢性肝炎と代償性肝硬変の境界線ははっきりしません。症状も慢性肝炎と同じであまり明確なものはありません。
さらに進んで非代償性肝硬変へ移行してしまうと、代償性肝硬変とは様子が一変し、黄疸やむくみ、腹水などが見られます。
特に、非代償性肝硬変から肝不全・肝がん・食道静脈瘤・肝性脳症になると、命取りにもなるので注意が必要です。
肝硬変になると肝がんの発症率が非常に高くなります。また、肝硬変がさらに進行すると極端に肝機能が低下して肝不全になります。肝不全になると肝臓移植しか回復の方法はありません。
また、アルコールが原因の肝硬変に多い食道静脈瘤は破裂すると大出血を起こして危険です。肝性脳症は肝臓の老廃物処理機能が低下し、老廃物が脳まで達して意識障害などがでます。
さらに詳しく言うと、肝不全にも急性肝不全と慢性肝不全の2つがあり、ここで説明した肝不全は慢性肝不全の方です。
- ・慢性肝不全
…肝硬変の末期症状として数ヶ月~数年かけて徐々に進行する - ・急性肝不全
…それまで肝臓に何も問題がなかった人が、劇症肝炎や薬剤が原因の肝炎によって急激に肝細胞が破壊されて、発病から8週間以内に脳症、腹水、黄疸などが現れる。
【4】 肝がん
長い時間かけて肝炎や肝硬変が肝がんに移行します。
長期に渡り肝細胞の壊死や再生を繰り返すことで肝細胞に障害を起こすと同時に、遺伝子まで傷つけ、それががん化すると考えられています。
日本では、肝がんの原因のほとんどがB型・C型肝炎ウイルスです。(他の臓器から転移してきたがんではなく、肝臓で発生したがんの場合)
そのため、B型・C型肝炎ウイルスが原因で慢性肝炎や肝硬変になった人は、定期的にがん検診を受けて早期発見につとめましょう。
また、肝がんは再発率がきわめて高いという特徴があります。
肝がんの種類
肝臓にできるがんは、大きく2つに分けられます。
もともと肝臓に発生した「原発性肝がん」と、他の臓器に発生したがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」です。
肝臓には多くの血液が流れ込むので、さまざまな場所に起きたがんがこぼれ落ち、血液を介して肝臓に流れてくるため、がんの転移が多いです。なので、「原発性肝がん」よりも「転移性肝がん」の方が発生頻度が多いです。
原発性肝がんは、肝細胞そのものから発生する「肝細胞がん」と、胆管細胞に起こる「肝内胆管がん」、肝細胞と肝内胆管の両方に発生するがんの3つに分けられますが、「肝細胞がん」が90%を占めています。
肝がんの進行
「転移性肝がん」は、慢性肝炎や肝硬変と関係なくできるがんです。
それに対し、慢性肝炎や肝硬変が5年~15年ほどの長い時間をかけて肝がんになったのが「原発性肝がん」です(原発性肝がんの90%が肝細胞がん)。
日本では、肝細胞がんの原因の90~95%がB型・C型肝炎ウイルスです。
その他の肝臓病
これまで紹介した肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がん以外にも、原因や病気の場所や状態によって様々な肝臓病があります。肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんよりはマイナーですがいくつか紹介します。
肝膿瘍(かんのうよう)
肝臓に膿がたまる病気
・化膿性(細菌性)肝膿瘍…細菌が原因
・アメーバ性肝膿瘍(これは日本ではまれ)…赤痢アメーバが原因
原発性胆汁性肝硬変
自己免疫によって肝臓内の胆管が徐々に破壊される。しだいに肝硬変へ進行。この病気にかかる90%が女性。(名前に肝硬変と入っているが、肝硬変になる手前の状態)
ワイル病
レプトスピラという細菌による重症の肝臓の感染症。動物などの尿から感染。
ウィルソン病
遺伝による肝臓病。銅が肝臓に蓄積する病気。手が震え物がつかめなくなります。進行すると肝硬変になる。銅を正常化する薬が有効。
子供の肝臓病
新生児肝炎
生後2ヶ月ごろから黄疸が出て便が白っぽくなる。多くは6ヶ月で黄疸が取れてよくなる。
先天性胆道閉鎖症
生後まもなく胆管が完全に閉塞し黄疸が出る。手術、特に肝移植が唯一の治療法。
ライ症候群
急に肝臓が悪くなり脳の症状が出て死亡する重篤な病気。解熱剤のアスピリンとの関係が考えられている。
まとめ
■肝臓病の代表格は、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝がんの4つ。
→これらをまとめて「肝臓病」と呼ぶ。
■脂肪肝→肝炎→肝硬変→肝がん の順で進行していく。
脂肪肝は比較的軽い生活習慣病。
■「病気の原因」と「病気の状態」を合わせて、長い病名になることもある。
例えば、アルコールが原因の脂肪肝は『アルコール性脂肪肝』と呼び、ウイルスが原因の肝炎は『ウイルス性肝炎』と呼ぶ。
脂肪肝
肝臓に脂肪が過剰にたまった状態。比較的軽い病気で、食生活の改善や禁酒などで改善できる。
肝炎
肝臓に炎症が起きる。原因のほとんどはウイルス感染。大半は自然治癒しますが、半年以上炎症が続くと、肝硬変に移行してしまうことがある。
肝硬変
肝炎によって肝臓の細胞が壊死し、肝臓が硬くなってしまった状態。肝機能がかなり低下してしまう。硬くなった肝臓を元に戻すことは出来ないので、進行を食い止めるしかない。
肝がん
肝炎や肝硬変が長い時間かけて肝がんに移行します。原因のほとんどはB型・C型肝炎ウイルス。
肝臓の基礎知識
そもそも肝臓って何?という基本的な部分を簡単に説明します。
1.肝臓の位置
肝臓は、お腹の上のやや右寄りの位置にあります。三角形のような形です。
↓このようにかなり大きく、人の体の中で一番大きな臓器で、重さは成人男性で1.2kg~1.5kgもあります。
大きさから分かるように、人間にとって重要な臓器です。
2.肝臓の構造①
肝臓の構造をザックリ説明すると、血液が流れ込んできてそれを肝臓の外に排出する構造になっています。(下図)
肝臓に流れ込んできた血液を肝臓の中でキレイにしたり成分を作り変えるのが肝臓の仕事です。
そして、肝臓の中でキレイになった血液を肝臓の外へ排出して心臓→全身へと送ります。
全身 へ送られた後、再び肝臓に戻ってきます。
さらに肝臓にはもう一つ出口があり、「胆汁」という体液が排出されます。排出された胆汁は、老廃物を体外へ排泄する役割を果たします。
このように、肝臓には大量の血流が常に流れ込み、肝臓内でたくさんの仕事をしているので、体内で一番大きな臓器なんです。
3.肝臓の構造②
肝臓の血流の入口と出口が理解できましたね。次は肝臓内部をもっとズームして見てみましょう。
このように、肝臓は「細胞」と「毛細血管」のかたまりです。
なんと2500億個もの肝細胞(肝臓の細胞を肝細胞と言います)が集まって肝臓を形作っていて、その細胞の間に無数の毛細血管がびっしりと張りめぐらされています。
ちなみに、私たちがよく食べる「レバー」が肝臓です!レバーを想像すると「細胞と毛細血管のかたまり」ということがなんとなくイメージ出来ますね。
4.肝臓の機能
肝臓は、分かっているだけでも500以上の働きがあります!
その中でも最も重要な機能が3つあります。
① 食べ物として摂取した栄養を利用しやすい形に作りかえる
私たちは、食べ物から摂取した栄養素をそのままの形では使えません。
食べ物は胃や腸で消化・吸収され、栄養をたっぷり吸収した血液は胃や腸を出て肝臓に流れ込みます。
そして肝臓の中で、体内で利用しやすい形に栄養素を作りかえます。
体内で利用しやすい形に作りかえられた栄養素は、血液に乗って肝臓から出て心臓へ運ばれます。
② アルコールや薬などの有害なものを無害な物質に作りかえる
私たちの体には、アルコール・薬・細菌・ウイルスなど、体にとってさまざまな有害なものが入ってきます。
肝臓は、これらの有害な物質を体に無害な物質に変えてくれます。
無害化された物質は、尿や胆汁の中に排出されて体の外に出て行きます。
例えばアルコールは、肝臓で二酸化炭素と水に分解されて体の外に排泄されます。
お酒を飲みすぎると二日酔いになるのは、アルコールの量が多すぎて肝臓の機能が追いつかずに有害な物質のまま体内に残ってしまうためです。
③ 胆汁という体液を作る
胆汁は、食べ物に含まれる脂肪の消化吸収を助けたり、体内で不要になった物質を排泄する役割のある体液です。
肝臓は、このように重要な役割のある胆汁を肝細胞で絶えず作っています。
このように、肝臓は物質を作りかえる・毒の分解・不要物質の排泄などさまざまな機能があります。
肝臓病の治し方
普段の生活でできる、肝臓に負担をかけない方法を6つ紹介します。
1.十分な睡眠を取る
眠っている時はあまりエネルギーを必要とせず、肝臓での代謝が抑えられるので、肝臓の負担が減ります。
また、入眠後に分泌される成長ホルモンによって、ダメージを受けた肝細胞が修復されます。入眠時間が遅いと成長ホルモンが十分に分泌されないので23時くらいまでには寝るようにしましょう。
また、疲れた肝臓を十分に回復するには7~8時間の睡眠が必要です。
2.疲れたら横になる
昼間など合間を見て横になる習慣をつけましょう。
体を横にすると、立っているときに比べて30%も肝臓への血流が増えるので、肝臓への負担が軽減します。
夜に十分な睡眠が取れなかった時などにも、昼に横になる時間を作るといいでしょう。
3.熱い湯に長くつからない
入浴により体が温まると血液が皮膚の表面に集まります。そのため、一時的に内臓の血流量が減り、肝臓の働きが低下します。
熱い湯に長くつかると肝臓に大きな負担がかかるので、ぬるめのお湯で半身浴がおすすめです。湯船につかるのは10分程度にしましょう。
また、運動直後の入浴はさけます。食前食後、飲酒後の入浴は厳禁です。
4.食後に横になる
食後は、肝臓が盛んに動きます。摂取した栄養素を肝臓で代謝するので、肝臓への血流量を増やす必要があります。
肝臓への血流量は姿勢によって大きく変わり、横になっているときが一番血流量が多いです。横になったときの肝臓の血流量を100%とすると、立ち上がると70%に減り、歩いたりすると50%にまで減ってしまいます。
なので、食後30分~1時間くらい仰向けに横になる習慣をつけましょう。
会社などで横になるのが難しい場合は、足を別の椅子にあげて足を高くしてゆったりと椅子に腰掛けるだけでも門脈の血流量は増えます。
5.不要な薬は飲まない
私たちが服用した薬は、腸から吸収され必ず肝臓に運ばれ、解毒されます。
つまり、薬をあれこれ飲むと肝臓に余計な負担がかかります。実際に、薬剤性肝障害という病気があるほどです。
薬が肝臓を傷める原因は2つあります。1つは、薬そのものの作用が強すぎて直接肝臓を傷める場合です。もう1つは、薬によって体がアレルギー反応を起こして二次的に肝臓を傷める場合です。
肝障害を起こしやすい薬は、水虫薬、抗生物質、鎮痛剤、糖尿病薬などで、そのなかでも特に要注意なのは、水虫薬と抗生物質です。この2つは体内のバイ菌を殺すほど強力な作用があるからです。
肝臓の薬以外は飲まないほうがいいでしょう。
6.タバコは吸わない
タバコを吸うと、有害物質の解毒のために肝臓の仕事量が増え、多くのエネルギーが必要になるのに、その一方で肝臓への血流量が減って肝臓への酸素の供給量が減るうえ、肝臓での機能に必要なビタミン類がタバコによって損なわれたりしてしまいます。
また、タバコは、肝がんのリスクを高めることがわかっています。
肝臓病の食事療法
では、毎日の食べ物で肝臓に良いものを見ていきましょう。
まずは全ての肝臓病に共通の食事療法の基本を紹介するのでおさえておきましょう。次の項で、それぞれの肝臓病ごとの食事療法をさらに詳しく紹介しています。
1.良質のたんぱく質を食べる
肝臓の細胞はたんぱく質で出来ているので、ダメージを受けた肝臓の再生にはたんぱく質が必要です。
たんぱく質を多く含む食べ物には脂肪も多く含まれることが多いです。肝臓のためには、たんぱく質を多く含み脂肪分の少ない、納豆、豆腐、卵の白身、肉の赤身、白身の魚、などが良いです。
また、たんぱく質の取りすぎも逆に肝臓の負担になるので、普通より少し多い程度(体重60kgの人で1日70gのたんぱく質)を目安にします。
具体的には、
- ・鶏胸肉1/3枚
- ・アジ1尾
- ・豆腐1/2丁
- ・卵1個
で、約60gのたんぱく質が取れるので1日量の目安にしましょう。
2.ビタミン・ミネラル・食物繊維を十分に取る
多くのビタミンが肝臓で活性化されて作用を発揮し、脂溶性のビタミンは肝臓に貯蔵されています。そのため、肝臓の機能が低下している人は、ビタミン不足になりやすいです。
肝臓が悪い人は、健康な人の2~3倍のビタミンを取る必要があります。
特に不足しがちなのは、水溶性で体内に蓄えられないビタミンB群やビタミンCです。
また、便秘になって腸に便が貯まるとアンモニアが発生しますが、これを分解するのも肝臓の役目です。便秘がひどいと肝臓の負担が大きくなるので、食物繊維も十分にとりましょう。
3.油の種類に気をつける
肝臓が悪い人は脂質の代謝能力が落ちているので、脂肪肝を悪化させてしまうリスクがあります。油は1日で大さじ1に抑えるようにします。
でも、脂質は血液や細胞膜などを作る大切な栄養素でもあるので、制限しすぎるのもダメです。難しいですが気をつけましょう。
また、油にはコレステロールを増やす「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」がありますが、できるだけ「不飽和脂肪酸」を選びます。不飽和脂肪酸の見分け方は、「固まらない油」です!例えば、青魚の油やオリーブオイルなどが良いです。逆に、バターやラードは固まる油なので飽和脂肪酸なので避けましょう。
さらに、古くなった油は肝臓の大敵です!古くなった油に含まれる過酸化酸素は有害な物質で、肝臓で分解しなければならず、肝臓に負担がかかります。
なので、使い古した油や、スナック菓子、インスタントラーメンは食べないようにします。
4.糖質は食物繊維と一緒に取る
糖質は体の基本的なエネルギー源としてなくてはならないものなので、肝臓が悪い人が糖質を極端に減らす必要はありません。
糖質の摂取後に急激に血糖値が上がってしまうと、インスリンが大量に分泌されます。インスリンの分泌は、肝臓に脂肪を蓄える信号として働いてしまい、脂肪肝を引き起こしやすくなってしまいます。
そのため、糖質の吸収を穏やかにしてインスリンの過剰な分泌が起こらない食物繊維の多い食品で糖質を取ると肝臓の負担が少なくなります。
例えば、白米より玄米、パンなら胚芽パンが良いです。豆やイモ類もおすすめです。
各肝臓病の食事療法
肝炎・脂肪肝・肝硬変と、同じ肝臓病でも食事の注意点が違います。
基本的には前項の4つの基本」を守っていれば良いですが、それぞれの肝臓病で注意が必要な点をまとめました。
急性肝炎の食事
やや脂肪を制限した食事にします。
高たんぱく高ビタミンが基本です。白身の魚・卵・ヨーグルト・豆腐など消化のよいものを中心に、たんぱく質は1回の食事で1種類は食べるようにします。
アルコールが原因の肝炎の人は、ビタミンB1・B2・B12・葉酸などのビタミンB群が不足しがちなので取りましょう。
また、アルコール以外の原因(ウイルスなど)の人は、ビタミンA・C・Eが不足しがちなので取りましょう。
ウイルスが原因の肝炎の中でも、C型肝炎の場合は、鉄が吸収されやすくなり肝臓に多くの鉄が沈着して線維化(硬くなること)が進むことが分かってきました。なので、1日の鉄分摂取量を健康な人の半分程度にします。体に吸収されやすいヘム鉄を含む食品を減らして、吸収されにくい非ヘム鉄の食品に変えたり、鉄分を吸収しにくくする緑茶を飲むと良いです。
慢性肝炎と肝硬変(代償期)の食事
慢性肝炎と肝硬変の初期の代償期は、境が明確ではないので食事の注意点も同じです。
食欲もあって症状が安定していれば、基本的には、先ほど説明した「肝臓に良い食事の4つの基本」を守っていれば、健康な人とあまり変わりない食事で大丈夫です。
ただ、肝硬変の人と、肝炎のなかでもC型肝炎の人は、鉄分を制限します。
余分な鉄分は肝臓に貯蔵されますが、肝硬変の人は鉄分の取りすぎが肝臓の線維化(硬くなる)を進めてしまいます。
C型肝炎の人は、鉄が吸収されやすくなるので肝臓に多くの鉄が沈着して線維化(硬くなること)が進むことが分かってきました。C型肝炎は、1日の鉄分摂取量を健康な人の半分程度にします。
鉄分を減らすには、体に吸収されやすいヘム鉄を含む食品を減らして、吸収されにくい非ヘム鉄の食品に変えたり、鉄分を吸収しにくくする緑茶を飲むと良いです。
アルコールが原因の人は、ビタミンB1・B2・B12・葉酸などのビタミンB群が不足しがちなので取りましょう。また、アルコール以外の原因(ウイルスなど)の人は、ビタミンA・C・Eが不足しがちなので取りましょう。
肝硬変(非代償期)の食事
むくみや腹水を予防する為に、たんぱく質・脂肪・塩分を制限します。水分制限もある程度は必要です。
また、便秘で分解しきれなかったアンモニアが脳にまわると肝性脳症を起こすこともあるので、便秘にならないよう食物繊維をしっかり取りましょう。
また、黄疸がある場合は脂質を制限します。
肝硬変や黄疸が長く続くとビタミンDが不足し、黄疸によってビタミンKも足りなくなるので取りましょう。
脂肪肝の食事
基本的には、先ほど説明した「肝臓に良い食事の4つの基本」に沿った食事で良いです。
ただ、アルコールが原因の脂肪肝は、酒量を制限します。
肥満が原因の脂肪肝は、エネルギー摂取量を制限して標準体重に近づけます。
糖尿病が原因の脂肪肝は、血糖値が上がらないようにコントロールします。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の人は、鉄の過剰摂取は酸化ストレスの増強につながるので、鉄分を1日6mgまでに抑えることが推奨されています。また、NASHに関与している活性酸素を抑制するために抗酸化作用の強い食品を積極的にとります。
プレゼントなび