肝臓は自覚症状が出にくい臓器の為、病院や健康診断の結果で「肝機能の数値が悪い」と言われ驚き、心配になる人が多いです。

肝臓に良い漢方薬は8つほどあり、肝機能の数値が改善したと実証されているものや肝臓病の症状である黄疸や腹水などに効果があるものもあります。

基本的には、肝疾患で漢方薬を使うのは、病院の治療では不十分な場合や、漢方薬を飲むことで西洋薬を減量できる場合です。

このページでは、肝臓に良い漢方薬について記載のあるさまざまな文献を引用しつつ、紹介していきます。

(参考文献: 嶋田豊(2016)『漢方薬事典』主婦と生活社、泉並木(2012)『肝臓病の最新治療』主婦の友社、関水康彰(2015)『すぐに使える漢方薬入門』技術評論社、木下繁太郎(2015)『漢方薬の選び方使い方』つちや書店、矢数圭堂(2008)『症状別・病気別やっぱり漢方薬が効く』主婦の友社)

目次

そもそも漢方薬とは?


普段病院で処方される西洋薬は、人工的に合成された「化学物質」です。

一方で、漢方薬は植物の根や実や種子を乾燥させた「生薬」を組み合わせて作られます。

漢方薬はこのようにいくつかの「生薬」を組み合わせて作られています。

漢方薬 生薬

4000年という長い年月をかけて、効果は最大限に出るように、毒性や副作用は最小限に抑えるような絶妙な割合で生薬が配合されています。

西洋薬と漢方薬の違い

西洋薬は単一成分

普段、病院で処方される西洋薬は、単一成分で作られているので、1つの不調にしか効きません。

例えば、咳止めの薬は、咳以外の不調には効きません。

つまり、症状が10個あれば10個薬が必要です。

成分が単一なので、一つの症状を改善する力が強い一方で、多くの薬が必要です。

漢方薬は複数の成分

一方で漢方薬は、冒頭で説明したように5~20種類 ほどの生薬の組み合わせで作られています。

さらに、個々の生薬にもさまざまな成分が含まれているので、複合的な効果があります。

つまり、10個の症状があっても、1,2種類ほどの漢方薬で対応できるため、“薬づけ”にならず体の負担が少ないです。

漢方薬は肝臓に負担がかかる?

前項で漢方は体の負担が少ないと言いましたが、肝臓病の場合は、一概には言えません。

なぜなら、私たちが服用した薬は、腸から吸収され必ず肝臓に運ばれ、肝臓で薬剤を無害な物質に分解します。

つまり、薬をあれこれ飲むと肝臓に余計な負担がかかります。実際に、薬剤性肝障害という病気があるほどです。

薬が肝臓を傷める原因は2つあります。1つは、薬そのものの作用が強すぎて直接肝臓を傷める場合です。もう1つは、薬によって体がアレルギー反応を起こして二次的に肝臓を傷める場合です。

ちなみに、肝障害を起こしやすい薬は、水虫薬、抗生物質、鎮痛剤、糖尿病薬などで、そのなかでも特に要注意なのは、水虫薬と抗生物質です。この2つは体内のバイ菌を殺すほど強力な作用があるからです。

漢方薬も同じように肝臓に負担がかかり肝臓を傷めるのかについて、明記されている文献はありませんでした。

もちろん漢方薬は抗生物質のような強力な作用はないですが、漢方薬も薬の一つと考えて、「薬は飲めば良いという訳ではない」「飲みすぎると肝臓に負担がかかる」ということを覚えて、出来るだけ不必要な薬は飲まない、漢方薬を飲むとしても1、2種類にするなど気をつけることが大事でしょう。

たとえば肝臓に良い漢方薬を飲むなら、その分他の薬(風邪薬や水虫薬、頭痛薬などあまりやめても支障のないもの)を一つやめた方がいいかもしれません。

肝臓の薬を服用している人は、漢方薬も追加して飲みすぎではないか、併用して副作用がないか、など慎重に調べることをおすすめします。

肝臓だけ考えるのであれば、肝臓の薬・漢方薬以外は飲まないほうがいいでしょう。

次項では、漢方薬が適する肝臓病と適さない肝臓病を紹介していきます。

漢方が合う肝臓病と合わない肝臓病

肝臓病で漢方薬を試してよいのは、西洋医学的な治療法(病院での治療)のみでは不十分な場合、または漢方薬の併用によって西洋薬(病院で処方される治療薬)の減量や副作用防止が期待できる場合です。

漢方薬治療の一番の目的は、補助療法・正常化維持で、自覚症状を改善してQOL(生活の質)を高めることです。

漢方薬が適する肝臓病

  1. 慢性肝炎
  2. 肝硬変

これらの肝臓病で、特に自覚症状がある場合は、漢方薬を上手く使うことで自覚症状が改善されることが多いです。

そのため、肝硬変の中でも、代償期より自覚症状のある非代償期の方がより漢方薬が向いていると言えます。

(代償期…肝硬変の初期でまだ症状が出ていない時期
非代償期…肝硬変が進行してしまい症状が出てくる時期)

漢方薬を試みてよい肝臓病

  1. 急性肝炎
  2. 原発性胆汁性肝硬変
  3. 自己免疫性肝炎
  4. 脂肪肝
  5. 悪性腫瘍

これらの肝臓病の自覚症状を改善してQOL(生活の質)を高める目的で漢方薬を使います。

急性肝炎は、B型ウイルス・C型ウイルス肝炎以外の場合は、一過性で本来自然治癒しやすい肝臓病なので、ふつう西洋医学的治療を優先しますが、自覚症状の改善を期待して漢方薬を使うことがあります。

漢方薬が不適な肝臓病

  1. 肝がん
  2. 肝性脳症
  3. 胃・食道静脈瘤
  4. 悪性腫瘍(手術適応例)
  5. アルコールの飲みすぎが原因の肝臓病で禁酒が守れない場合

1~4は、西洋医学的治療を行うべき疾患です。5は、なによりもまず禁酒しましょう。

※ さまざまな肝臓病の名前が出てきて分からなくなった人は「図解ですぐわかる!肝臓の病気の種類」のページで肝臓病の種類をわかりやすくまとめているので見てください。

[症状別]肝臓に良い漢方薬


それでは肝臓に良い漢方薬を紹介します。

肝臓に効く基本の漢方

肝臓に良い漢方薬といっても、各漢方医の文献によって多少ばらつきがありました。でも、以下の6個はほとんど皆共通して肝臓病に有効としていたので、肝臓の基本の漢方薬と言えるでしょう。

肝臓の漢方薬の一番基本は「小柴胡湯」で、漢方薬の中では肝疾患に最も多く使われています。

  1. 小柴胡湯
    (しょうさいことう)
  2. 大柴胡湯
    (だいさいことう)
  3. 補中益気湯
    (ほちゅうえっきとう)
  4. 十全大補湯
    (じゅうぜんたいほとう)
  5. 茵陳蒿湯
    (いんちんこうとう)
  6. 茵陳五苓散
    (いんちんごれいさん)

※注意: 肝硬変の人、インターフェロン療法をしている人、慢性肝炎で血小板が10/mm²万以下(肝硬変が疑われる)の人は、「小柴胡湯」という漢方薬を使用しないでください。

脂肪肝・肝炎・肝硬変など、肝臓病の種類によって選ぶ漢方が変わります。下記を参考に選んでみてください。

後ろでそれぞれの漢方薬についてさらに詳しく説明しているので、最後はそちらに進んでください。

脂肪肝に良い漢方薬

脂肪肝で肥満がある場合は、「大柴胡湯」を使います。ただし、食事療法が必要で漢方薬のみではやせることは期待できません。

肥満があまりない人は、「小柴胡湯」を使います。また、「大柴胡湯」を飲むと下痢をしてしまうという場合も「小柴胡湯」に切り替えます。

また、脂肪肝の動物の肝線維化(肝臓が硬くなっていくこと。線維化が進んでしまうと肝硬変になる)を「桂枝茯苓丸」が抑制したという報告があります。アルコールが原因ではない脂肪肝から肝炎に進んでしまった人(NASHと言う)は肝硬変にならないように「桂枝茯苓丸」を試す価値があると思います。
(NASHが良く分からない人は別記事「図解ですぐわかる!肝臓の病気の種類」の目次「脂肪肝」を見てください)

アルコールが原因で脂肪肝の人は、漢方薬を試す前にまずは禁酒しましょう。

後ろでそれぞれの漢方薬についてさらに詳しく説明しているので、最後はそちらに進んでください。

急性肝炎に良い漢方薬

急性肝炎は基本的に西洋医学的治療を優先しますが、自覚症状の改善を期待して以下の漢方薬を使うことがあります。

急性肝炎に使う基本の漢方薬は、「茵陳蒿湯」です。「茵陳蒿湯」は黄疸が出ているときに良く使う漢方ですが、急性肝炎の場合は黄疸がなくても使って良いです。

急性肝炎で黄疸が出ていたけど、もう黄疸が治まってきたという場合は、「茵陳蒿湯」から「小柴胡湯」に切り替えることもあります。

※「茵陳蒿湯」は便秘にも効果がある漢方薬なので飲むと下痢をする場合があります。その場合は「茵陳蒿湯」を「茵陳五苓散」に置き換えます。

後ろでそれぞれの漢方薬についてさらに詳しく説明しているので、最後はそちらに進んでください。

慢性肝炎に良い漢方薬

慢性肝炎で無症状もしくは症状が強くない時は、「小柴胡湯」を使います。「小柴胡湯」とインターフェロンの併用は禁止されていますが、インターフェロン治療後に使うこともあります。

疲労感や倦怠感が著しい場合は、「補中益気湯」を使います。

胃もたれや食欲不振、吐き気、など消化器の症状が目立つ場合は、「六君子湯」を使います。

上記の3つが基本ですが、むくみや顔や手がはれぼったい場合は「茵陳五苓散」、便秘や尿の色が濃い場合は「茵陳蒿湯」を併用して飲みます。

C型慢性肝炎のインターフェロン+抗ウイルス薬療法による貧血には「十全大補湯」を使います。

後ろでそれぞれの漢方薬についてさらに詳しく説明しているので、最後はそちらに進んでください。

肝硬変に良い漢方薬

肝硬変に進行した場合は、「補中益気湯」「十全大補湯」を使います。(十全大補湯補中益気湯に比べてより体力が衰退して弱っている場合に)

黄疸がある場合は、「茵陳蒿湯」「茵陳五苓散」を使います。(茵陳五苓散茵陳蒿湯に比べて軽い黄疸に)

(・筋肉のけいれんがある場合は、「芍薬甘草湯」1回分を寝る前に飲みます。
・出血、特に鼻血は「黄蓮解毒湯」を飲むと出血を起こしにくくなり止血までの時間が短縮されることが知られています。
・原発性胆汁性肝硬変(PBC)の人は、「茵陳蒿湯」を飲みます。
・食欲不振が強い場合は、「六君子湯」を飲みます。
・腹水がある場合は、「茵陳五苓散」を飲みます。
・便秘がある場合は、「茵陳蒿湯」を飲みます。)

後ろでそれぞれの漢方薬についてさらに詳しく説明しているので、最後はそちらに進んでください。

肝がんに良い漢方薬

もちろん完治は期待できませんが、補助的につらい自覚症状を取り除き、QOL(生活の質)を高める目的で「補中益気湯」を使います。食欲不振が強いときは「六君子湯」を使います。

 

それでは、ここからそれぞれの漢方薬の効果や注意点を詳しく説明していきます。↓↓

1.小柴胡湯

(しょうさいことう)

肝臓に効く漢方薬 小柴胡湯

ツムラ漢方小柴胡湯エキス顆粒 24包
2,318円(12日分)

慢性肝炎に広く応用できる肝臓の基本の漢方薬です。肝臓病だけでなく他の不調にもよく使われる漢方薬。

医療機関で最も多く使われてきた漢方薬の1つです。

どんな漢方?

小柴胡湯は、「慢性肝炎での肝機能障害を改善する」ことが証明され(1992年)、それ以降、慢性肝炎や肝機能障害に広く使われるようになりました。実際に、肝機能数値の改善効果が認められていて、肝炎の進展の抑制効果が期待できます。

そのため、肝臓病に最もよく使われる漢方薬です。

小柴胡湯には、「甘草」という生薬が配合されていますが、この甘草の根に含まれるグリチルリチンが肝機能障害に対する効果があることが分かっています。グリチルリチンは、グリチロンやネオミノファーゲンCなどの商品名で、肝機能改善の薬としても販売されていますし、市販の風邪薬などにも含まれていることもあります。

また、配合されている生薬の「柴胡」は「黄ごん」と共に炎症をしずめて熱を下げる効果があり、肝炎(肝細胞に炎症が起きている状態)に効果的です。さらに「柴胡」に含まれるサポニンは肝臓の機能を高める働きがあります。

小柴胡湯は免疫機能を整えて免疫力を高めたり、炎症を抑える働きがあり、肝臓以外のさまざまな病気や症状にも効果がある漢方薬です。

肝臓病では特に慢性肝炎に使いますが、肝臓以外には、

 ・風邪が長引いてこじれた時
 ・気管支炎
 ・産後の回復
 ・慢性胃腸障害
 ・アレルギー性の病気

などに広く使われます。

症状としては、食欲不振・吐き気・倦怠感などがある場合に向きます。

※ インターフェロンと小柴胡湯の併用でC型肝炎が劇的に改善した例が1980年ごろ多く見られましたが、その一方で、副作用として間質性肺炎での死亡例が報告され、死亡例は少ないものの1994年にインターフェロンと小柴胡湯の併用が禁止されました。ですからインターフェロンを投与している人は飲まないでくださいね。

副作用や注意点

まれに副作用で間質性肺炎が起こり、早期に適切な処置を受けないと危険な状態になることがあります。発熱・咳・呼吸困難などの症状が出たら使用を中止して医師の診断を受けましょう。
また、インターフェロン製剤を使用中の人、肝硬変・肝がんの人、慢性肝炎で血小板が10/mm²万以下(肝硬変が疑われる)の人は使用できません。
まれですが黄疸の副作用にも注意が必要です。

小柴胡湯は単独でも使いますが、五苓散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・小青竜湯・柴苓湯・柴朴湯などとよく併用します。

配合生薬

柴胡、半夏、黄ごん、大棗、人参、甘草、生姜

2.大柴胡湯

(だいさいことう)

肝臓に効く漢方薬 大柴胡湯

ツムラ漢方大柴胡湯エキス顆粒 24包
2,236円(12日分)

体格が良く体力がある人に向く漢方薬です。肝臓病では、肥満が原因の脂肪肝の人に、食事療法の補助的に使います。

どんな漢方?

大柴胡湯は、消化器系の不調がある人に良く使われます。

体格が良く、体力がある人で、便秘がちな人に向きます。

肝臓病以外には、

 ・便秘
 ・胃腸炎
 ・胆石症
 ・胆のう炎
 ・じんましん
 ・黄疸
 ・不眠症
 ・神経症
 ・肥満症
 ・高血圧による症状の改善

などに使います。

血中の中性脂肪やコレステロールを減らす作用があるという報告もあります。

配合生薬の「柴胡」と「黄ごん」は、解熱消炎作用があって胸から脇にかけての圧迫感を治します。「枳実」は、気の滞りを除いて消化を助け、「芍薬」と協力して腹痛を取り除き、「半夏」と「生姜」は吐き気を止め、「大黄」は便秘を治し、これらが一緒に働いて効果を発揮します。

副作用や注意点

腹痛、下痢などが起こったり、まれながら間質性肺炎、黄疸が起こることもあります。

子供には大柴胡湯を使うことは無いので小柴胡湯にします。

配合生薬

柴胡、半夏、黄ごん、芍薬、大棗、枳実、生姜、大黄

3.補中益気湯

(ほちゅうえっきとう)

肝臓に効く漢方薬 補中益気湯

ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒 24包
1,873円(12日分)

虚弱で元気がない人の元気を補う漢方です。そのため、肝臓病の初期ではなく、進行した肝臓病の方が向きます。具体的には、疲労感が著しい慢性肝炎や肝硬変・肝がんなどです。

どんな漢方?

元気を補う漢方薬の代表格で、気力・元気・エネルギーが不足したさまざまな症状に広く使われます。

肝臓の治療には長い時間がかかるので、全身の倦怠感や食欲不振などの症状が現れることが多いです。このような症状を治すのに効果的なのが、食欲を増進させて全身の倦怠感を取り除く「補中益気湯」です。

滋養強壮作用のある「人参」、胃腸の働きを良くする「生姜」や「陳皮」、血行をよくする「当帰」、水分代謝をよくする「朮」、といった生薬がいっしょに働いて効果を発揮します。

いずれも胃を中心とした消化器の働きを助ける生薬なので、食欲が出るうえに、栄養が十分に吸収されます。そうなれば、衰えていた体力も回復し、倦怠感も減り、病気に対する抵抗力がつきます。

気力がわかない、疲れやすいという人に向いていて、肝臓病以外には、

 ・かぜ
 ・夏バテ
 ・病後、産後の体力回復
 ・虚弱体質の改善
 ・手術後の回復
 ・胃腸虚弱
 ・抗がん剤や放射線治療の副作用による倦怠感の軽減

など、脈もおなかの力も弱く、全身倦怠感(とくに手足の倦怠感)や食欲不振などをともなうさまざまな不調に使えます。

副作用や注意点

特になし

配合生薬

黄耆、当帰、柴胡、人参、蒼朮、大棗、陳皮、甘草、升麻、生姜

4.十全大補湯

(じゅうぜんたいほとう)

肝臓に効く漢方薬 十全大補湯

十全大補湯エキス錠クラシエ 180錠
2,990円(15日分)

全身が弱って漢方で言う「気」も「血」も著しく不足した人の気力と体力を補う漢方薬です。補中益気湯と似ていますが、十全大補湯は補中益気湯に比べてより体力が衰退して弱っている場合に使います。

どんな漢方?

血行を促したり、滋養強壮作用のある10種類の生薬の配合により、気力や体力を補います。全身の状態を良くして体力をつける効果があります。

気力・体力を補う漢方薬として、補中益気湯の次にメジャーです。

肝臓病では、肝硬変に進行した場合に使い、体力の衰退具合によって補中益気湯と十全大補湯を使い分けます。(十全大補湯は補中益気湯に比べてより体力が衰退して弱っている場合に)

また、C型慢性肝炎のインターフェロン+抗ウイルス薬療法による貧血にも使います。

肝臓病以外には、

 ・病後、手術後の体力低下
 ・産後の衰弱
 ・貧血
 ・冷え性
 ・虚弱体質
 ・胃腸虚弱
 ・抗がん剤や放射線治療の副作用軽減
 ・脳血管障害の慢性期

など、疲労倦怠感、貧血、皮膚の乾燥、食欲不振、手足の冷え、やせてしまったなどの不調があるとき、慢性病で全身(気力も血色も)が衰えて弱くなった状態に広く使います。

副作用や注意点

著しく胃腸の虚弱な人が使うと、食欲不振、悪心、下痢などの消化器症状が出ることがあります。

配合生薬

黄耆、桂皮、地黄、芍薬、蒼朮、川きゅう、当帰、人参、茯苓、甘草

5.茵陳蒿湯

(いんちんこうとう)

肝臓に効く漢方薬 茵陳蒿湯

茵チン蒿湯エキス細粒 30包
3300円(10日分)

肝臓や胆のうの病気でとくに黄疸が出ているときに使う漢方薬です。

どんな漢方?

茵陳蒿湯は、古くから黄疸の改善に使われてきた漢方薬です。

黄疸とは、胆汁の色素が血液中に多くなり、皮膚や白目が黄色くなるものです。

茵陳蒿湯の配合生薬の「茵陳蒿」は、胆汁の分泌と排泄を促進する作用により胆汁のうっ滞を改善します。また、「山梔子」にも胆汁の分泌を促す作用があり、「大黄」には便通を良くする作用があります。

この3つの生薬が一緒に働いて、肝臓や胆のうの病気に伴う黄疸がある時や、胆汁の流れを良くしたい時に効果を発揮します。

急性肝炎のときは、黄疸がなくても茵陳蒿湯を使います。

黄疸がほとんどですが、それ以外には、

 ・じんましん
 ・口内炎

などに使うこともあります。

比較的体力があり、便秘がちの人に向きます。症状としては、尿の量が減ったり、口が渇いたりする場合に向きます。

逆に胃腸が弱い、下痢がちな人には向きません。

副作用や注意点

軟便や下痢がある人が飲むと、下痢が悪化する場合があります。

配合生薬

茵陳蒿、山梔子、大黄

6.茵陳五苓散

(いんちんごれいさん)

肝臓に効く漢方薬 茵陳五苓散

茵陳五苓散エキス細粒 90包(30日分)12,960円
楽天市場:茵陳五苓散を探す
Amazon:茵陳五苓散を探す

肝臓に効く漢方薬 五苓散

ツムラ漢方五苓散料エキス顆粒 24包
1,845円(12日分)

黄疸や腹水、むくみがある場合に使います。

どんな漢方?

「五苓散」という漢方薬に「茵陳蒿」という生薬を加えたものが「茵陳五苓散」です。

茵陳五苓散 五苓散 違い

基本的に、肝臓病では、黄疸がある時に「茵陳蒿湯」か「茵陳五苓散」を使いわけます。茵陳五苓散は茵陳蒿湯に比べて軽い黄疸に使います。

「茵陳蒿湯」には便通を良くする作用がある「大黄」という生薬が入っていますが、「茵陳五苓散」には大黄が入っていないので、肝臓病で茵陳蒿湯を飲んだけど下痢をしてしまうという場合は、茵陳五苓散に変えてみましょう。

また、「五苓散」は、体内水分の偏在を調整する作用がある漢方薬です。そのため、肝硬変で腹水がある場合や、慢性肝炎でむくみや顔や手がはれぼったい場合も「茵陳五苓散」を使います。

「茵陳五苓散」は高価な漢方なので、手に入れるのが難しいという人は「五苓散」でも良いでしょう。茵陳五苓散の方がより胆のうの機能を向上する力が強いですが、両方ともむくみや黄疸に効果はあります。

「茵陳五苓散」の配合生薬の「茵陳蒿」は胆汁の分泌と排泄を促進する作用により胆汁のうっ滞を改善し、「猪苓」は組織液を血流中に移動して尿として出し、「沢瀉」と「茯苓」も利尿剤で協同して利尿効果を高め、「白朮」は胃腸の働きを助けて過剰水分の吸収を促進し、「桂皮」は発熱・悪寒・頭痛などの症状を治し、腎臓と膀胱の機能を活性化します。

のどが渇いて尿が少ないという症状が、茵陳五苓散や五苓散を飲む目安になります。

副作用や注意点

小柴胡湯や大柴胡湯と併用することも多い

配合生薬

沢瀉、白朮、猪苓、茯苓、茵陳蒿、桂皮

7.六君子湯

(りっくんしとう)

肝臓に効く漢方薬 六君子湯

ツムラ漢方六君子湯エキス顆粒 24包
1,991円(12日分)

代表的な胃腸薬で、科学的にも効果が実証されています。肝臓病で食欲不振や胃もたれがある場合は試してみましょう。

どんな漢方?

体力があまりなく、胃腸が虚弱な人に使われる代表的な胃腸薬で、よく使われます。

食欲不振、胃もたれ、げっぷ、胃痛、胸焼け、下痢、などの症状が、六君子湯を使う目安になります。

肝臓病では、慢性肝炎や肝硬変、肝がんで、胃もたれ・食欲不振・吐き気などの消化器症状が強い場合に「六君子湯」を使います。

六君子湯は古くから胃もたれや食欲不振などに効く薬として知られてきましたが、近年の研究で科学的にもその作用が証明されてきています。

実際に動物実験では、六君子湯を飲むと胃壁の平滑筋がゆるみ、胃の中に食べ物をたくわえる機能や、十二指腸へ送り出す排出機能が改善することが分かっています。

さらに、食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌を促したり、胃粘膜の血流を改善するなど、さまざまな作用が報告されています。

胃ガン末期で食欲が無く、食べ物が通りにくいという状態でも、状態を著しく改善し、延命効果が期待できるという報告まであります。

副作用や注意点

特になし

配合生薬

人参、半夏、茯苓、蒼朮、大棗、陳皮、甘草、生姜

8.桂枝茯苓丸

(けいしぶくりょうがん)

肝臓に効く漢方薬 桂枝茯苓丸

ツムラ漢方桂枝茯苓丸料エキス顆粒 24包
2,700円(12日分)

肝臓の線維化を抑制したという研究結果がある漢方薬。

どんな漢方?

桂枝茯苓丸は、冷え性や月経困難など女性の体質改善に使われる代表的な漢方薬として知られ、婦人科で使われる三大漢方薬と言われるほど有名です。また、漢方の美肌剤としても有名です。

肝臓病の漢方薬としてはあまり知られていませんが、最近の研究で、脂肪肝の動物の肝線維化(肝臓が硬くなっていくこと。線維化が進んでしまうと肝硬変になる)を桂枝茯苓丸が抑制したという報告があります。アルコールが原因ではない脂肪肝から肝炎に進んでしまった人、つまりNASHと呼ばれる人は、肝硬変にならないように桂枝茯苓丸を試す価値があると思います。
(NASHが良く分からない人は「脂肪肝の種類」を見てください)

そのほかにも、近年の研究で末梢の血行を改善する作用が認められ、高血圧の付随症状や糖尿病の合併症の症状改善に使われたり、脳血管障害の慢性期に使われることもあります。動脈硬化の進行抑制につながる作用も明らかになっています。

副作用や注意点

広く使われる薬ですが、体力が低下した人では胃腸障害が出やすくなります。長期で使う場合は、小柴胡湯、大柴胡湯、柴胡桂枝湯、安中散などと併用して胃腸障害を防ぎます。

配合生薬

桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬

肝臓の漢方の選び方


漢方薬を体力や体格で選ぶ

どれを飲むか迷っている人は選ぶ基準のひとつとして、体力や体格も参考にしてみてください。

体力のある順に合う漢方薬並べると以下のようになります。

体力が充実して便秘する人・体格がいい人は大柴胡湯を使い、以下、小柴胡湯補中益気湯十全大補湯と体力が落ちゆく程度にしたがって使います。十全大補湯はかなり弱った状態に使います。

  1. 大柴胡湯
  2. 小柴胡湯
  3. 補中益気湯
  4. 十全大補湯

この体力別の一連の処方は、肝臓病だけでなく他の不調でも良く使われる基本概念です。

本ページで紹介したほかの漢方薬も以下にまとめました。

 ・体力があまりない…六君子湯
 ・体力が中くらい…桂枝茯苓丸、茵陳五苓散
 ・体力がある…茵陳蒿湯

漢方薬をメジャー度で選ぶ

肝臓病で一番良く使われる漢方薬は「小柴胡湯」ですが、本ページで紹介した漢方薬のなかで肝臓病に関わらず一般的に良く使われるベスト4を紹介します。

どの漢方薬を飲むか選ぶにあたり、広く飲まれている漢方薬のほうが安心という人などは参考にしてみてください。

  1. 桂枝茯苓丸
  2. 小柴胡湯
  3. 大柴胡湯
  4. 補中益気湯

この4つが上から順にメジャーな漢方薬です。

「桂枝茯苓丸」は代表的な女性の為の漢方薬として良く使われますし、「小柴胡湯」は慢性疾患に広く応用できる漢方薬です。

また、「小柴胡湯」や「補中益気湯」は、風邪のときにも良く飲む漢方薬です。

「茵陳蒿湯」、「茵陳五苓散」は黄疸などに使うので、風邪のように頻度が高い症状ではないのでメジャー度が低いのは当然ですね。

まとめ


脂肪肝に良い漢方薬

大柴胡湯…肥満がある人が食事療法と平行して使う

小柴胡湯…肥満がない人、大柴胡湯で下痢をしてしまう人

桂枝茯苓丸…肝細胞の線維化の防止(つまり肝硬変の防止)

急性肝炎に良い漢方薬

急性肝炎は基本的に西洋医学的治療を優先するが、自覚症状の改善を期待して漢方薬を使うことがある。

茵陳蒿湯…急性肝炎の場合は黄疸がなくても使って良い

茵陳五苓散…茵陳蒿湯で下痢をしてしまう場合

小柴胡湯…急性肝炎で黄疸が出ていたけど、もう黄疸が治まってきたという場合

慢性肝炎に良い漢方薬

小柴胡湯…慢性肝炎で無症状もしくは症状が強くない時

補中益気湯…疲労感や倦怠感が著しい場合

六君子湯…胃もたれや食欲不振、吐き気、など消化器の症状が目立つ場合

上記3つが基本ですが、症状によって下記2つを併用して飲みます。

茵陳五苓散…むくみや顔や手がはれぼったい場合

茵陳蒿湯…便秘や尿の色が濃い場合

(C型慢性肝炎のインターフェロン+抗ウイルス薬療法による貧血には「十全大補湯」を使う)

※注意: 肝硬変の人、インターフェロン療法をしている人、慢性肝炎で血小板が10/mm²万以下(肝硬変が疑われる)の人は、「小柴胡湯」という漢方薬を使用しないでください。

肝硬変に良い漢方薬

補中益気湯

十全大補湯…補中益気湯に比べてより体力が衰退して弱っている場合

基本的には上記2つ。特別な症状がある場合は下記の漢方を飲む。

茵陳蒿湯…黄疸がある場合や便秘がある場合。また、原発性胆汁性肝硬変の人。

茵陳五苓散…茵陳蒿湯に比べて軽い黄疸に。また、腹水がある場合も。

芍薬甘草湯…筋肉のけいれんがある場合に1回分を寝る前に飲む

黄蓮解毒湯…出血とくに鼻血

六君子湯…食欲不振が強い場合

肝がんに良い漢方薬

補中益気湯…補助的につらい自覚症状を取り除き、QOL(生活の質)を高める目的

六君子湯…食欲不振が強い場合

 

肝機能の改善に少しでも役立てていただければ嬉しく思います。あれこれ飲むとかえって肝臓に負担がかかるかもしれないので多くても2種類の漢方薬にしておくことをおすすめします。肝臓以外の病気の薬などを飲んでいる人は漢方薬を追加すると薬が多すぎないかなど気をつけてくださいね。

肝臓に良い生活の習慣や、食事のポイントなどは、別記事「図解ですぐわかる!肝臓の病気の種類」の目次「肝臓病の治し方」をご覧ください。

肝臓に良いお茶やハーブティーにも興味がある方は、別記事の「肝臓に良いハーブティー」「肝臓に良いお茶」をご覧ください。

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