マンションは老朽化によって建て替えをする場合があります。

「マンションを建て替えた事例はあるの?」

「マンションの建て替えは実際にはどんな感じなの?」

といった疑問に対して、

実際にマンションを建て替えた6つの事例を写真と共に紹介します。

  • ・建て替えた築年数
  • ・住民が負担した費用
  • ・建て替えに至った経緯
  • ・建て替えに立ちはだかる問題

などが実際の事例から把握できます。

住民が大満足した「成功事例」から、費用がかなりかかった「失敗事例」まで、様々な事例を集めました。

目次

マンション建て替え事例は少ない

マンションは老朽化すると建て替えの話が持ち上がります。

でも、実際に建て替えができた事例はわずかです。

なんと、日本中でこれまでに252件のマンションしか建て替えが完了していません。(2016年4月時点 国土交通省調べ)

これは、築40年以上のマンションの3%に相当します。(2016年4月時点 国土交通省調べ)

つまり、築40年以上のマンションの97%は建て替えが出来ていないということです。

住民の合意が得られなかったり、建て替えの方針が決まらないなどの理由で、建て替えができないマンションの方が圧倒的に多いです。

住民が負担する建て替え費用が多くなってしまい、住民の合意が得られず、建て替えではなく「延命」つまり修繕などの方針に転換する例が多いです。

では、実際に建て替えが完了できたマンションはどのような経緯をたどって、どのようなマンションに生まれ変わったのでしょうか?

マンション建て替え事例6選

ここからは、建て替えが完了した6件の事例を紹介していきます。

スムーズに進んだ事例もあれば、困難を極めた事例もあります。

中には、費用負担0円の夢の成功事例も。

巨大団地から、都心の小さなマンションまで様々な事例を集めたので参考にしてください。

1.桜上水ガーデンズ

マンション 建て替え 事例 桜上水団地

〈建替え前〉 桜上水団地

マンション 建て替え 事例 桜上水ガーデンズ

マンション 建て替え 事例 桜上水ガーデンズ

マンション 建て替え 事例 桜上水ガーデンズ

〈建替え後〉

  • ・東京都世田谷区
  • ・築50年で建替え完了
    (築年1965年→建替え2015年)
  • ・404戸→878戸の建替え

この事例のポイント

17棟の団地を建て替える大規模なプロジェクト。

なんと費用0円での建て替え!費用面での超成功事例。

だた、話が持ち上がってから建て替え完了まで21年もかかった。

背景

世田谷区の桜上水団地は、桜上水駅まで徒歩3分、新宿から7km圏内と立地が抜群の団地です。

4.7haの広大な敷地に、17棟404戸が建つ大規模団地でした。

マンション 建て替え 事例 桜上水団地

1965年の分譲当時、多くの団地が50㎡以下だったのに対し、この団地は平均66㎡と広く、高級物件でした。

さらに、分譲価格の半分は自己資金でないと審査が通らなかったこともあり、住民にはエリート層が多く、建築の専門家も30人ほどいました。

そのため、当初から団地の維持・管理に対する意識が高かった物件です。

50年間、管理組合による自主管理を貫いており、大規模修繕なども計画的に実施していました。

住民の良好なコミュニティも形成され、住民同士のつながりが強かったです。

建替えの話が持ち上がる

通常は築35年~40年頃に建て替えの話が持ち上がるのですが、この団地は少し早く、築21年頃に有志の女性たちが「建替を望む会」を作りました。

これを受けて築24年頃、管理組合理事会の諮問機関として「桜上水団地の将来を考える会」が発足。

築27年頃には、「増築」「大規模修繕」「建て替え」のどれにするかの検討が始まりました。

当時、団地の問題点は3つありました。

  1. 4~5階建てなのにエレベーターが無い。その上住民が高齢化している。
  2. 旧耐震基準の建物だったので耐震性に不安がある。
  3. 分譲当時は広いとされていたが、現代においては狭く、天井も低い。またコンクリートの厚さが12cmしかなく、遮音性能が低い。

このような問題があったので、70戸ほどは転居して、賃貸に出されていました。

修繕ではなく建替えの方針が決まる

まず、大規模修繕の試算をしたところ、「1戸あたり1240万円負担」というとんでもない額になった。

それなら建て替えがいいだろうと、築29年に建て替え計画を始めました。

まず、プロの力を借りて建て替え計画案を作成する必要があると考え、コンサルタントを募集し、手を挙げた58社から日建設計に決めました。(築34年頃)

費用負担0円の建替え計画が進む

マンション建て替えでもっとも一般的な手法は、建て替えで今より大きなマンションを建て、増えた住戸を売却し、その売却利益で建て替え費用を賄う方法です。

桜上水団地もこの方法で計画を進めました。

この手法は、「今より大きな建物が建つこと」が重要です。売却戸数が多ければ、その分収益が増えるからです。

また、増えた住戸が高く売れるために「駅近の立地の良いマンション」であることも重要です。

桜上水団地は、

  • ・敷地に対してゆったり建築されていた
    (大きな建物が建てられる)
  • ・世田谷区の駅近の好立地
    (高く売れる)

という2つの条件が揃っていました。

そのため、増えた住戸の売却利益で建替え費用を全て賄えることが分かりました。

なかなかこんな好条件が揃った団地はありません。増えた住戸の売却利益が出ても、建て替え費用が賄いきれず、各住民が1000万程度負担する例が多いです。

事業協力企業の選定

住民の費用負担が0円の場合、専有面積70㎡を基準に計算すると、最低670戸、低層南向き、という計画案になりました。

その計画案を元に、「建替検討委員会」が発足し、築37年に事業協力企業を選定。

書類審査で10社→4社に絞り、面接で企業としての姿勢を審査しました。その結果、野村不動産と三井不動産レジデンスの2社に決定。

ゼネコンには、大林組と清水建設を指名。

築38年には「建替推進委員会」が発足しました。

住民合意が困難を極めた

建替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要ですが、さらに団地の場合は、各棟3分の2以上の賛成も必要です。

団地には戸数が多い棟と少ない棟が混在していることが多いですが、桜上水団地も16戸しかない棟があった。

つまり、1棟16戸の内6戸が反対すれば、他の398戸が賛成しても建替えできません。

そのため、築41年と築42年の建て替え決議集会では、賛成が80%以上もあったのに、決議は不成立になってしまっていた。

そうしている内に、建て替え推進派と反対派の対立が激しくなっていった。

そこで、組合理事長自ら管理事務所に日頃から常駐し、「どんな疑問、意見も言ってください」と呼びかけた。

反対者の意見を聞き、これまでの計画に無かった桜並木や公園を追加するなど、細やかに対応していった。

また、様々な経済状態の住民がいることから、大小様々な部屋プランを用意。さらには仮住まい費用も収益から捻出するなど工夫しました。

そうして築44年でやっと建て替え決議が成立しました。(賛成340戸、反対64戸、白票や棄権26戸)

さらに工事開始まで5年もかかった

その後、売渡請求にも応じなかった17戸に「明渡請求」を起こし(築45年)、16戸と和解(築47年)。

その間の築46年の時点で、賛成住民(全体の95%)は団地内から退去し、仮住まいなどに移った。

最後の1戸には、築49年の時点で最高裁で明渡し断行の判決が確定した。

同築49年に、解体工事が始まり、築50年時点で新マンションが完成しました。

このように決議が成立したにも関わらず、裁判などが長引き、決議成立から工事開始まで5年もの歳月がかかってしまいました。(普通は1年程度しかかからない)

その影響で、仮住まい費用も0円の計画でしたが、住民が負担することになってしまいました。

所感

仮住まい費用以外の負担はなかったので、費用面ではかなりの成功事例です。近年、費用面でここまで好条件だった事例は他には「ブリリア多摩ニュータウン」くらいだと思います。

しかし、建て替えまでに21年もかかった事例は他にありません。通常は10年ほどで建て替えが完了します。大規模団地は規模のメリットで費用が安くなる傾向がある反面、合意形成に時間がかかる傾向があります。

2.テラス渋谷美竹

マンション 建て替え 事例 美竹ビル

〈建替え前〉 美竹ビル

マンション 建て替え 事例 テラス渋谷美竹

マンション 建て替え 事例 テラス渋谷美竹

マンション 建て替え 事例 テラス渋谷美竹

〈建替え後〉

  • ・東京都渋谷区
  • ・築53年で建替え完了
    (築年1959年 → 建替え2012年)
  • ・40戸 → 196戸の建替え

この事例のポイント

1人の反対票も無い「全員合意」での建て替えを実現

背景

美竹ビルは、東京都住宅供給公社が分譲。渋谷駅徒歩1分という便利な立地にある。当時は憧れの的だったモダンなマンションでした。

しかし、築40年ごろから「水回りの劣化」や「高齢者が多いのに6階までエレベーターが無い」などの声が大きくなっていった。

そして築43年目に建て替えの勉強会を開始しました。

タワーマンションに建て替える案が浮上

勉強会開始当初は、タワーマンションにした方が資産価値が上がるという意見が多く、総合設計制度を使って高い建物を建てる案に人気が集まりました。

(総合設計制度とは、敷地内に空き地を設けることで街全体の環境整備になることをアピールすれば、空き地を設けるボーナスとして、新しく建てるマンションの大きさの制限が緩くなる制度のこと。)

しかし、もともと敷地が狭く、そこに総合設計制度を利用するとなると、制度上、空き地を設けなくてはいけない。

そうなると、鉛筆上の細長い高層ビルになる。地震が来たらどうなるのか、火災が起きたらどうなるのか、という慎重な考えを持つ人が5分の1以上に達し、築47年目に行った1回目の建て替え決議は否決されました。

渋谷区の地区計画を使うことに

そのころ、渋谷区は大規模な街ぐるみの再開発を進めていました。

まだヒカリエが出来る前で、区としては品のいい商業エリアを想定して街並みを誘導していく考えでした。

その新たな地区計画を使うと、見返りとして建物の大きさ制限を緩くするボーナスが付いてきます。結果、総合設計制度を使うよりも大きな建物を建てられることが分かりました。

それを利用し、新たな建て替え案を作り始めました。

事業協力者には、新日鉄興和不動産を選定。

住民の希望で、「免震構造」「光や風など自然の要素を取り入れた造りにすること」「防犯性に配慮すること」といった点が盛り込まれました。

全員合意が実現

そして築49年目に、2回目の案での建て替え決議を行い、全員合意で成立しました。

それまでに70回に及ぶ協議を重ねてきたと言う。全員合意に至るまで相当な努力があったことが分かる。

所感

建て替えにかかった具体的な費用は公開されていませんが、「全員合意だったこと」を考えると、費用負担0円だったのではないかと思います。

建て替え費用が安くなるには、「今より大きな建物が建つこと」「立地が良いこと」が基本条件です。このマンションは渋谷駅徒歩1分という最強の立地であったことと、区の地区計画を利用して40戸→196戸という5倍もの大きさに建て替えているため、かなり条件が良かったと言えるでしょう。

3.ブランシエラ池田石澄

マンション 建て替え 事例 石澄住宅

〈建替え前〉 石澄住宅

マンション 建て替え 事例 ブランシエラ池田石澄

マンション 建て替え 事例 ブランシエラ池田石澄

マンション 建て替え 事例 ブランシエラ池田石澄

〈建替え後〉

  • ・大阪府池田市
  • ・築50年で建替え完了
    (築年1968年→建替え2018年3月予定)
  • ・184戸→マンション128戸+一戸建て84戸の建替え

この事例のポイント

敷地の半分を「戸建用の土地」として売却し、建替え費用を賄った珍しい事例

背景

石澄住宅は、1968年に日本住宅公団(現・UR都市機構)が分譲した、4階建て9棟(全184戸)の団地です。

駅からバス10分、バス停から徒歩1分という不便な立地にある郊外型の団地です。

4階建ての建物にはエレベーターがなく、建物の老朽化も著しかった。さらには空き家も多く、住民はゴーストタウン化を恐れていました。

建て替えを意識し始めたのは築37年目で、この団地を管理していた日本総合住生活(JS)に依頼して劣化診断を進めた。

それと同時に、アンケートを集めて「建替えか大規模修繕か」の住民の意向を聞きました。

「長期修繕計画を作らずに、その都度修繕を繰り返してきたので、いまさら大規模修繕方式に切り替えるのはコストがかさむ。」「むしろ住民が元気なうちに建て替えたい」という意見が多かった。

ちなみに、大規模修繕となると、1戸あたり600万円もの修繕費用が必要だと管理組合が試算していました。

2つの問題があった

建替えるという方針が決まり、築39年目には、コンサルタントに西宮のゼンクリエイトを選定。

しかし、この団地には問題があった。

最大の問題は、近くに大阪国際空港があり、敷地の南半分は航空法による高さ制限がかかるということでした。敷地の南半分は4階建てまで、北半分は市の規制で6階建てまでしか認められません。

建替えの一般的なモデルは、今より大きなマンションを建てて、増えた分の住戸を売却して、その売却利益で建替え費用を賄う手法です。

しかし、高さ制限により大きな建物が建てられないため、建物を最大化してその売却収益増を図るという手法が難しい。

もう一つの問題は、この団地の立地の不便さにあった。最寄り駅までバスで10分かかる。

一般的に、バスを使う地域は、たとえ大きなマンションを建てて増えた住戸を売るとしても販売に苦戦する可能性が高く、採算性が悪い。

管理組合は、コンサルタントと共にあらゆる可能性を検討しました。

様々なプランを検討

建替えに問題があると分かったため、改修する場合と、建替えする場合の両方の可能性を検討しました。

エレベーターがないことが住民の最大の不満だったが、階段室型の団地にエレベーターを増設することはコスト上難しいと分かりました。

建替えプランも何案も練った。

  • ・南半分を4階建て、北半分を6階建てにする案
  • ・南半分を戸建て用地として売却し、北半分を6階建てにする案

など。

全部を建替えるのは難しいのでは、という予測はこの時からあったと言う。

そして、築42年目に建替え推進決議を経て、築43年目には長谷工コーポレーションを事業協力者に選定。

戸建て用地として売却するプランを採用

住民を費用負担を抑えるために、「南半分を戸建て用地として売却し、北半分を6階建てにする案」 を採用した。

石澄住宅は、交通利便性が低い代わりに緑が多いなど子育て環境に恵まれていたので、戸建て住宅の需要が高く、一般競争入札で売却すれば高値での落札を見込めた。

高さ制限のある敷地の最有効使用を実現できるプランだ。

1区画100㎡程度の戸建て用地として一般競争入札で売却。関西圏内の住宅会社が取得した。

これにより、マンションとして売却するよりも高い価格で処分できた。

一方、北半分のマンションの規模は建替え前に比べて縮小した。

それは住民アンケートで、建替え後の戻り入居を希望している人が184戸中130戸程度にとどまることが判明していたからです。

建替え前は4階建て×9棟(全184戸)だったが、建替え後は6階建て×2棟(128戸)と縮小した。

難条件だったが、費用は少なく済んだ

南半分の戸建て用地売却利益は住民に還元された。

その額は、売却利益から旧マンション解体費用を除くと、54㎡の住戸で760万円、64㎡の住戸で910万円になった。また、これに修繕積立金の返金額として1戸あたり180万円が加算された。(この還元された金額から新マンション取得費用をそれぞれが払う)

それでも、仮住まい費用が2年半分かかることや、仮住まいのために引っ越してまた戻るのが大変、などを理由に、別の家を購入する人や賃貸物件に移る人が多くなった。

その結果、建替え後に戻った住民は、184戸のうち、67戸だった。(全体の36%)

所感

利便性の悪い立地にしては、なかかな上手く調整できた事例でしょう。「敷地の半分を一戸建て用の土地として売却する」という、このエリアにマッチしたプランに調整できたことが勝因だろう。

にも関わらず戻り入居が36%に留まったのは、高齢化した住民たちが、駅から遠いマンションに戻るのではなく、この機会に駅近のマンションに移ったのではないかと予想できる。

4.アトラス新宿河田町ヒルズ

マンション 建て替え 事例 河田町住宅

〈建替え前〉 河田町住宅

マンション 建て替え 事例 アトラス新宿河田町ヒルズ

マンション 建て替え 事例 アトラス新宿河田町ヒルズ

〈建替え後〉

  • ・東京都新宿区
  • ・築59年で建替え完了
    (築年1956年→建替え2015年)
  • ・34戸→41戸の建替え

この事例のポイント

41戸の小規模な建て替え。

都の条例によって建物の大きさに制限がかかり、費用がかさんだ。

背景

河田町住宅は、1956年に東京都住宅供給公社が分譲したマンション。

東京都新宿区の都営大江戸線「若松河田」徒歩3分という便利な立地。近くには歴史的建造物の小笠原伯爵邸も残る閑静な住宅地です。

分譲当時からグレードが高いマンションだったことが分かります。

築47年までの間に、3回の大規模修繕を行ってきましたが、老朽化が激しく、住民には「いつまで直し続けるの?」という思いがあった。

また、築50年目には割賦期間が終了し、所有権が住民に移ることになっていた。マンション管理が公社から住民に移るタイミングでもあるため、築47年目に建て替えの勉強会を始めました。

(分譲当時は、割賦販売による団地の分譲が一般的で、割賦期間中は所有権が売主にあり、住民には所有権はなかった。)

建て替えは難しいと言われる

このマンションは、

  • 敷地に余裕がある
    →つまり今より大きなマンションが建つ
  • 立地が良い
    →つまり増えた住戸が高く売れる

という好条件が揃っていたので、マンション建替管理組合の住民たちも「当然建替えられるはずだ」と思っていた。

しかし、建替え勉強会が始まったころ、設計士に建築条件を見てもらうと、「入り口のロータリーが位置指定道路になっているので建て替えは難しいだろう」と言われ、住民は驚き戸惑った。

(位置指定道路とは、敷地内でも道路として指定されるもので、建築面積から除外される。)

建物は老朽化している上に、狭いので出て行った世帯もあり、空き部屋も目立っていました。エレベーターも無く、耐震診断でも耐震性不足だった。

そうなると賃すに貸せない。

「だから、相続が起きて権利関係が複雑になって解決が難しくなる前に、自分たちの世代で解決しなくてはいけない」と思ったと建替組合理事は言う。

建替え補助金が出た

そして、築53年目に、建替組合理事がNPO法人「マンション再生なび」に相談した所、国土交通省のマンション再生検討のための補助金があると教わり、運よく補助金を受け取ることができた。

その補助金を活動資金に、理事会の女性たちで積極的に見学や相談に動いた。

築56年目には、コンペで事業協力者を旭化成不動産レジデンスに決定した。

難問にぶつかる

計画を詰める中で、東京都の安全条例により、幅6m未満の道路に面するマンションは延べ床面積が3000㎡以下に制限されることが分かった。

このマンションは敷地に余裕があったので、もっと大きな建物が建つと思っていたが、そうはいかなかった。

そうなると当然、増えた住戸を売却してその売却利益で建て替え費用を賄うことができないので、住民の費用負担が増えました。

同じ土地に新築マンションを買うよりは安いが、今までより広い部屋に移るためには「かなりの費用」が必要だった。(具体的な金額は公開されていない)

それでも、築57年目には建て替え決議が成立し、築59年目に新マンションが完成しました。

所感

やはり、小規模マンションは費用がかさむ傾向にあります。建て替え費用が安いのは大規模マンション(少なくとも100戸以上の規模)の建て替え事例ばかりです。

建て替えの勉強会を開始してから12年目に新マンションが完成しています。この12年という期間は平均的な長さです。

5.エアヒルズ藤沢

マンション 建て替え 事例 藤沢住宅

〈建替え前〉藤沢住宅

マンション 建て替え 事例 エアヒルズ藤沢

マンション 建て替え 事例 エアヒルズ藤沢

〈建替え後〉

  • ・神奈川県藤沢市
  • ・築53年で建替え完了
    (築年1965年 → 建替え2018年予定)
  • ・5階建て×7棟 → 15階建て×2棟、8階建て×1棟の建替え
    (170戸→360戸)

この事例のポイント

団地の建替えでネックになる「各棟3分の2以上の合意」に苦戦

背景

5階建て7棟の藤沢住宅は、敷地に余裕があり、樹木も育って穏やかな住環境が整えられていたが、住戸は58㎡、43㎡と小さかった。

また、急坂の上に立つエレベーターが無い5階建てなので、平均年齢65歳の住民にはきつかった。

そこで、築40年目に本格的に「修繕か建替えか」の検討を始めました。

それ以前から、何度か修繕か建替えかの検討の動きがあったが、途中で立ち消えになってしまっていた。

築40年目で住民アンケートを集めた所、高齢の住民こそ「建替えたい」という要望が強かった。

さらに築45年目に、ガス漏れ事故が2件連続で起こった。この時に再度アンケートを取った所、建替え希望は9割に達した。

ここに至って、住民の建物劣化の不安は大きく、「修繕では限界、建替えたい」という声が高まりました。

実は、同時期に建設された隣接するURの賃貸物件は先にどんどん高層マンションに建替えられていた。当時、URが「一緒に建替えましょう。仮住まいも用意します。」と提案してくれていたのですが、当時の理事たちの中には建替えに消極的な人が多く、計画が流れてしまっていました。

一部の強い反対派が生まれる

賛成9割の好スタートで進められた建替え計画だったが、一部の10人程度の反対派から誹謗中傷のチラシがまかれるようになった。

藤沢住宅は分譲時から持ち続けている人もいれば、バブル期に3000万で買った人も、最近1000万で買った人もいる。その中で、「自分の住戸はいくらで評価されるか」に敏感になり、思い込みが激しい人も出てきたのです。

反対派の誹謗中傷のチラシによって他の住民まで疑心暗鬼になっても困るため、間違っている部分は理事たちが文章にして正し、総会でもきちんと説明して対処していった。

建替え決議が否決される

築47年目には、事業協力者に新日鉄興和不動産と野村不動産の2社を選定。翌年、URリンゲージも事業協力者に加わった。

計画を具体化させていき、築49年目の7月に建替え決議を行ったが、7棟のうち、ただ1棟が1票の不足で否決されてしまった。

(団地内の全ての建物を一括で建替えるには、団地全体の5分の4以上の合意だけでなく、各棟の3分の2以上の合意が必要。)

しかし、そこで諦めず、 賛成派の熱が続くうちに間髪入れず同年12月に再度決議を行い、無事成立した。

順調に建て替え計画が進む

その後の建て替え計画は順調に進んだ。

事業協力3社のスタッフと、マンション理事長たちが現地建替事務局に詰め、住民の相談や個別面談にきめ細かく対応したことが良かった。

費用負担0円で同じ広さの部屋に移ることはできなかったが、58㎡に住んでいた人は40㎡に無償で移れた。高齢の一人暮らしの人はこの選択が多い。

広い部屋に移りたい人、今後の相続を考えている人は、お金を払って広い部屋を選択している。

2018年に新マンションが完成予定です。

所感

170戸→360戸と倍の大きさになっています。このように、建物を最大化してその売却収益で建て替え費用の一部を賄ったことが成功の秘訣でしょう。これが170戸→200戸程度の建て替えだとしたら住民の費用負担が増えてしまうので、建て替え反対派が増え、建て替えが実現していなかったと思います。

少戸数の棟が建ち並ぶ団地の場合、「各棟の3分の2以上の合意」がネックになることが多い。例えば、16戸の棟があればその中の6戸が反対すれば他の400戸が賛成しても建て替えできないからです。そのため、この事例のように、理事たちが細やかに住民の相談に乗るなど、1票を大事にすることがポイントです。

6.アトラス新宿左門町

マンション 建て替え 事例 左門町ハイツ

〈建替え前〉 左門町ハイツ
奥が住居棟、手前が事務所棟

マンション 建て替え 事例 アトラス新宿左門町

マンション 建て替え 事例 アトラス新宿左門町

〈建替え後〉

  • ・東京都新宿区
  • ・築54年で建替え完了
    (築年1962年 → 建替え2016年予定)
  • ・28戸 → 36戸の建替え

この事例のポイント

28戸 → 36戸というかなり小規模の建て替え事例

早い段階でコンサルタントを導入してスムーズに進んだ

背景

首都圏不燃建築公社が1962年に分譲したマンションで、事務所、住戸、賃貸が混在する建物でした。

だんたんと高齢化と賃貸化が進み、理事のなり手が減っていて、管理の質が悪くなっていました。

建物の老朽化が進んでいるのに、修繕費積立金のストックは3000万円しかなかった。これでは到底、大規模修繕はできない。

さらに、耐震の簡易診断を受けると、震度6で倒壊の恐れありという結果に。

加えて、このマンションは、法定容積率(敷地に対しての建物の大きさの上限)が導入された1970年以前に建てられていて、現行の法定容積率をオーバーしてしまっている不適合建築物でした。

つまり、通常は建て替えで戸数を増やすのに対して、このマンションは逆に以前より戸数を減らさなくてはなりませんでした。建て替えると、延べ面積は今の70%まで小さくなることが分かりました。

さらに、土地の権利も複雑になっていたという、問題ばかりの状態でした。

急ピッチで建て替え検討を進める

そこで、管理組合の理事長は、築47年目に急いで「修繕建替え委員会」を設置した。

素人対応では進まないと判断した理事長は、早々にコンサルタントを起用し、コンサルタントのアドバイスによって国交省から建替え検討の補助金を受け取ることができた。

そして、マンション内に事務所をかまえる企業も、建替えの急展開に目を見張り、「理事長が率先して建替えるなら強力します」と動き始めた。

東日本大震災を経て建替え決定

築49年目に、東日本大震災が起きた。バルコニーの一部が落下したり、エレベーターが2日間止まった。

高齢者が多いマンションで、11階まで階段を登る生活は困難を極めた。

そこで、震災直後には賃貸の人も参加する「震災対応特別チーム」を立ち上げました。これによって住民の意識が目に見えて変わっていきました。

そしてその月に、建て替え推進決議(建て替えを進めていいか、という住民投票)を行い、8割の賛成を得て決議が成立。事業協力者には旭化成不動産レジデンスを選定しました。

計画を進めていくと、建て替えには、「大規模修繕費用+耐震改修費用」と同じくらいの金額がかかることが分かりました。

すると、反対者が続出。建て替えには住民の5分の4以上の賛成が必要なので、28戸中6戸でも反対に回れば建て替え出来なくなります。

最終的に、建て替え決議の前に、理事長は全員に直筆の手紙を届け、「これが最後のチャンス、否決されれば自分は退く」と伝えた。

その結果、建て替え決議は5分の4以上の賛成を得て、成立し、建て替えが決定した。

所感

先ほど紹介した「テラス渋谷美竹の事例」が40戸→196戸と5倍になっているのに対し、28戸→36戸とほとんど増えていません。「いかに戸数を増やせるか」が、費用軽減のカギになるため、費用負担はかなり大きかったはずです。

費用負担が大きいと住民の反対派が多くなり建て替えが出来ないことが多いです。でも、このマンションの場合、東日本大震災でエレベーター停止やバルコニー崩壊などが起こり、老朽化を実感したことによってどうにか8割の賛成を得ているように思います。

ここまで小規模だと採算性無い為、通常は建て替えできないのですが、新宿区で駅徒歩4分という立地のおかげでどうにか採算性が取れ、建て替えが成立したのでしょう。

まとめ

様々な事例がありましたね。

複数の事例も調べた結果、建て替えの「年数」「費用」「期間」には、このような傾向がありました。

建て替えの築年数

  1. 築40年頃に建て替え計画を始める

  2. 7年~10年ほどかけて計画・住民の合意を進める

  3. 解体&工事に2年ほどかかる

  4. 築50年頃に建て替え完了

というパターンが多かったです。

→詳しくは「【24の事例で見る】マンションの建て替えが必要になる築年数は?」をご覧ください。

 

建て替えの費用

普通のパターン

 住戸取得費用:1000万

 仮住まい費用:300~400万

  →合計 1400万円程度

ラッキーなパターン

 住戸取得費用:500万

 仮住まい費用:300~400万

  →合計 900万円程度

かなりラッキーなパターン

 住戸取得費用:0万

 仮住まい費用:300~400万

  →合計 400万円程度

という傾向があります。

※住戸取得費用…建替え前と同じ広さの住戸に移る場合の費用
※仮住まい費用…2年~2年半賃貸に住む費用と、2回の引越し費用

→詳しくは「【12の事例で見る】マンション建て替えで住民が負担する費用」をご覧ください。

 

建て替えの期間

建て替え検討開始から、建て替えが完了するまでおおむね10年かかる。

一番短い事例では5年、長い事例だと21年かかっていた。

その内、工事にかかる期間はほとんどの事例で2年でした。

→詳しくは「【11の事例で見る】マンションの建て替えにかかる期間は?」をご覧ください。

建て替え事例リンク

マンションの建て替え事例が載っているリンクを貼っておきます。

本ページ以外の事例も確認したい人は参考にしてください。